傍に居たい

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 「家まで送って行こうか」と言った仁に一人で帰れると突っぱね歩き出した友也は完璧に拗ねた子供で仁は苦笑いして息を尽く。 「……困った奴だな?」 「………。」 何の返答もない玲志に仁は体を少し屈め顔を覗き込む。 「玲志…?」 「……何でもない。」 「そっか?…じゃぁ、行くか。腹が限界かも。」 お腹を押さえ楽しそうに笑う仁を見つめ玲志は腕を伸ばしギュッと仁の服を掴む。 「ん?なんだ??」 問い掛けてみるが無言で首だけを横に振る玲志に「燃料切れで動けないのか?」とからかうように聞けば微かに笑い「違うよ」と返ってくる。 ジッと仁を見つめる眼差しが真剣でずっと見ていると全てを射抜かれそうだった。 「……ただ………翼が欲しいなって思っただけ…。」 「翼か……。」 玲志がさっきの片翼の天使の話をしているんだと分かり仁は何気なく空を見上げた。 流れる雲は速く空の風が強い事が分かる。 太陽は時折、顔を出すがすぐに雲に覆われ隠れてしまう。  翼か……。 空を翔べたら気持ちいいんだろうなぁ……。 仁はぼんやりとそんな事を考えていた。
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