傍に居たい

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 お店を出れば「美味しかったぁ」と伸びをする仁の横で「うん」と頷きながら玲志は視線を泳がせる。 まったく味の覚えていない玲志は食べた気がしなかった。 束ねられた髪に触れながら仁を見上げる。 このまま一人で家に帰るのが淋しくて思わず伸びそうになる手を必死に堪える。 「……仁。」 「ん?なんだ?」 さり気なく歩調を合わせて歩いてくれる仁の優しさが玲志の胸を甘く疼かせる。 「今日……仁の家、行ってもいい………?」 「え、俺ん家…?」 いきなりの事で仁は己を指差し少し驚いた顔を見せた。玲志を見下ろせば困惑したような今にも泣きだしてしまいそうな何とも言えない顔をしていて仁は一瞬、黙ってしまう。 「玲志……――。」 「……やっぱいいや。忘れてっ………。」 そう言い駅の方へ駆け出していく玲志に腕を伸ばすが届かなかった。 「玲志っ!?」 呼び止めれば少し行った所で足を止め振り返り「またね、仁。」と手を振り再び走りだした玲志を止める事が出来ず仁は立ち尽くす。 「…気を付けて帰れよ。」 その声はすでに玲志には届かず虚しく街の騒音の中に消えていった。
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