傍に居たい

22/30
前へ
/466ページ
次へ
 しばらく走って駅に着けば疲れて思わずその場にしゃがみ込む。 体力にはあまり自信がない玲志は乱れた息を整えながら時間を見ようとポケットに手を突っ込むが出そうとしていた物が見当たらず鞄を覗いて見るがなかった。 玲志は肩をがっくりと落とし唸だれる。 「……最悪……携帯忘れた………。」 現代病とでもいうのか携帯がないと不安だった。 仕方なく玲志は来た道を戻り天下一に向かう。 初めて仁と二人で食事をしたラーメン屋“天下一”は玲志にとって大切な場所になった。 その天下一に行けばまだ暖簾が出ていてホッとした。閉まっていたらどうしようと考えながら歩いてきた玲志は遠慮気味に暖簾をくぐる。 「いらっしゃいっ」と威勢のいい声が飛んでくるがお客ではないので玲志は何だか申し訳なくなる。 「……すいません、忘れ物して……。」 「おっ、さっきのお兄ちゃん。預かってるよ。ちょっと持っててな。」 そう言って中に入り戻ってきたおいちゃんの手には携帯ともう一つ何かが握られていた。 「はいよ。」と渡されたそれをよく見れば一つは仁が掛けていた眼鏡だった。
/466ページ

最初のコメントを投稿しよう!

624人が本棚に入れています
本棚に追加