傍に居たい

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 この時季、学校の中は皆、忙しそうだった。 学祭の出し物や課題などに追われていてバタバタしている。そんな中、仁だけはどこかのんびりしている様子で最近、自分の指定席のようになったベンチでユキをお腹に乗せ気持ち良さそうに寝ていた。 賑やかな声が遠くで聞こえる仁のお気に入りの場所。  気持ち良さそうに眠る仁の寝顔を見下ろし玲志は立ちすくむ。 眼鏡を返したくてここに来たのに起こしたら可哀想だと動けないでいた。 「………仁。」 思わず零れた声は何処か淋しそうで切ない位、小さかった。名前を呼ぶだけで張り裂けそうな程、胸が苦しくなって壊れてしまいそうになる。 体を屈めそっと腕を伸ばし頬に触れれば微かに手首に息が掛かる。そのまま手をずらし前髪を梳けば柔らかい髪が指先をさらさらと流れる。 「…………仁。」 玲志は抑えきれず寝ている仁の唇にそっと自分の唇を重ねた。 微かに触れる春風のようなキスをして静かに離す。恐る恐る見下ろせば仁は起きる気配がなく玲志はホッとする。 仁に触れるだけで鼓動はスピードを増し甘く疼く。 我儘だと分かっていても心の中では傍に居たいと願い続ける。
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