傍に居たい

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 何もせず横になっていると段々と眠くなってくる。頬を撫でる風は優しくそっと髪をなびかせる。 「仁……。」 名前を呼ばれ遠退いていた意識を引き戻される。 見事な腹筋で起き上がり声のした方を見れば玲志が立っていた。 仁は「よぉ」と片手を上げ右にずれれば玲志が隣に腰を下ろす。 「またここに居たんだ。」 「んー…落ち着くからな、ここは。静かだし……。」 そう言って空を仰ぐ仁の横顔を見つめ玲志は小さく笑う。 「……行き詰まってる?」 玲志の台詞に仁は「ゔ…」と小さく声を盛らす。 「……考え中なだけだ。」 「そぅ……。」 玲志はおもむろに落ちていた木の棒を拾うと地面に何かを描きだす。 仁は不思議に思いながらも何かを描いていく玲志の手を目で追い掛ける。 ガリガリと土を削るような音と共にさっきまで分からなかった何かが段々とハッキリとしてくる。 描き終わったのか玲志は前かがみになっていた姿勢を戻し座り直す。 仁は思わず地面に描かれた画をジッと見つめる。 繊細で真っすぐだと感じる画に仁は思わず魅入ってしまう。
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