傍に居たい

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 眼鏡を掛けたのを見て「似合う、似合う」と小さく笑った仁の顔が目に焼き付いて離れなかった。 ふざけているような言い方ではなく目が少し真剣で優しくて何となく褒められているような気分になった。  玲志は寝返りをうち天井を見上げる。 腕を上げ自分の掌をジッと見る。仁の頬と髪の感触がまだ残っていた。 ふわりと柔らかくさらさらとした髪質は気持ちがよかった。 「……仁。」 思わず名前を零せば足元でワンッと鳴き声が聞こえる。 「お前じゃないよ……。」 玲志はそう言って起き上がると擦り寄ってきた犬を抱き上げれば嬉しそうに尻尾をこれでもかというほどバタバタとさせる。 「……お前はジンだろ。俺が言ったのは仁………って分からないか……。」 可笑しそうに呟きジンを抱き上げたまま後ろへ倒れジンを見つめる。 「……俺の事………どう思ってるんだろう……ねぇジン?君はどう思う……?」 玲志の問い掛けにジンはどこか淋しそうに鼻を鳴らす。そっと横に下ろせば「元気出して」とでも云うように顔を舐めてくるジンに小さく笑い頭を撫でる。 部屋の明かりを落とし玲志は目蓋を落とす。
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