傍に居たい

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 地面に描かれた画。 それは大きな翼を広げた天使の画だった。 今にも動きだしそうなその天使は何故か翼が片方しかなく何かを求める様に右腕が天に向かって伸びていた。 言葉が見つからず仁が思わず口を嗣ぐんでいると隣から何処か不安そうな声が耳に届く。 「……コレを彫ろうかと思ってるんだ。」 「すごいな…こんなの彫れるんだ。俺には絶対、無理。」 玲志の方を見れば玲志は俯きその寂しげな横顔に仁は思わず腕を伸ばしそっと髪を梳く。 おずおずと顔を上げ自分の方を向いた玲志に小さく微笑む。 「彫れたら……見せてくれよ。」 「…………いいよ。」 かなりの間が合ってから返ってきた返事に嬉しそうに笑えばそれにつられるように玲志から微かな笑みが零れた。 「でも……なかなか上手く出来ないんだ。」 そう言われ何気なく視線を下に下げれば膝の上に置かれた手が目に映る。 白くて細い綺麗な玲志の指が痛々しい位、絆創膏でいっぱいだった。 それを見た瞬間、仁は何だか押さえ付けられるような胸の痛みを感じた。
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