傍に居たい

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 仁は腕を伸ばすとそっと玲志の左手を掴みその手を引き寄せまるでおまじないでも掛けるかの様に親指で手の甲を優しく擦る。 「……痛いか?」 「少しだけ……でも平気。」 伝わってくる仁の手の温もりが玲志をホッとさせる。 ジッと見つめれば見下ろしてくる眼差しが優しくて顔が近くて玲志は頬を赤く染める。 ずっと仁の傍にいたいと密かに思っていてやっと前よりも隣に居られるようになって嬉しいのに玲志は恐くて仕方がなかった。  いつまでこうして傍に居られるんだろう。  いきなり捨てられたりはしないか。  突然、居なくなったりしないか。 そんな事ばかりが玲志の頭の中に浮かぶ。  あの時、しがみ付いた仁の背中の温もりが今でも残っていて微かに香るデオドラントが鼻腔を擽る。 爽やかで決してキツくはないのに己を主張しでも邪魔にはならない香り。 「仁って……いい匂いするよな………。」 ふわりと零れた玲志の台詞に仁は微かに頬を赤らめ少し困った顔を見せる。 「……それは俺じゃなくて香水だろう……危ない事を言うな……。」 そう言えば玲志は小さく笑った。
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