傍に居たい

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「なぁ……玲志。聞いてもいいか?」 「……何?」 仁は玲志の手を握ったまま視線を足元に下ろす。 正確に言えばさっき玲志が描いた天使の画を見つめる。聞いていいものなのかと迷いなかなか言葉が出てこない。 「…………この天使……何で片翼なんだ……?」 恐る恐る聞いてみれば玲志が寂しげに小さく微笑んだ。 「……もう一つ翼がなければ翔ぶ事は出来ない………例え…翔べたとしてもすぐに落ちてしまう………。」 「うん……。」 仁は玲志の声に耳を傾け何も言わず静かに聞いていた。玲志は顔を上げ仁の方を見れば視線に気付いた仁も顔を上げ玲志を見つめる。 「でも………隣に誰かが居てくれれば…………翔ぶ事が出来る……ずっと高く………何処までも……翔んでいけると思うんだ………。」 ジッと見つめてくる玲志は真っすぐで子供みたいに澄んだ目をしていた。 ひしひしと伝わってくる玲志の想いに仁は心臓を鷲掴みにされた気がした。 「玲志……――。」 何かを言おうとした瞬間、またしても腹が燃料切れを知らせカァーっと仁の顔が赤く染まり横で玲志がクスクスと笑うのが分かった。
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