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「・・・もう良いよお嬢さん。こんな傷慣れてる。それにその薬草は村で使う物だろう?俺なんかの為に使うなんてもったいない」
「そんなことありませんよ、それにこれは今山の麓で行われている戦で傷ついた人たちのために集めてるんです・・・貴方もその一人でしょう?忍者さんっ」
「・・・」
隠しきれている方が不思議なことではあったが、青年はその事実が彼女の口から漏れたことに肩を落とした。
同時にそっぽを向いてしまった。
「あんた・・・お人好しなんだな」
彼は小さく呟いた。
傷の手当ては粗方終わり、忍び服の汚れを払っていた。
途端、彼の腹の虫が悲鳴を上げた。
「ふふっ」
「ち、違うっ!これは!」
顔を赤らめてその大きな音の言い訳をする青年。先ほどまでの雰囲気とは打って変わる。
「空腹こそ最大の病ですよ・・・でも私お昼の余り物しかないの」
風呂敷から筍の皮の包みをとりだした。おにぎりはまだ二つ残っていた。
「これでかまわないかしら?」
青年は頷いた。
河原の大きな岩の上に二人で腰を下ろした。
日はだいぶ暮れてきて、鳥たちの鳴き声が山の中に漂い始める。
薄く白い月が木々の間に顔を出し始めた。
「・・・うまいな」
「それはよかった」
おにぎりにがっつく青年。しかしその手束の間動きを止めた。
「どうしたの?」
「いや・・・なんでも」
再びおにぎりを口の中に詰め込み始める。
「・・・戦なんてどうして起こるのかしらね」
「・・・」
「あなたみたいに怪我をする人ばっかりなのに・・・」
「俺も戦は嫌いだ」
「じゃあ、忍びのお仕事は仕方なく?」
「忍びは家業でもあるが、嫌々なわけではない」
「そうね、そんな顔してる」
「・・・」
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