またいつか・・・

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――ズキッ・・・ 「うっ・・・」 青年は頭を押さえ込んだ。 「大丈夫!?」 彼女は慌てて背中に手をかけた。 「・・・」 「?」 青年は返事を返さない。 ただ、どこか一点を見つめている。 直ぐさま我に返ると、彼女の方をじっと見つめた。 「・・・やっぱり!俺、あんたとどこかで会ったか?」 「・・・何を・・・初対面でしょう?」 「あんたの名前は?俺は駿河才次郎」 ため息をついてから、 「私は佐藤あまちよっていうわ」 「・・・」 「・・・聞いたことないでしょう、才次郎君?」 肩を落とした彼の顔を見て言った。 悔しそうな表情で俯いたまま小さく彼も頷いた。  「月も色づいてきた。これ以上迷惑を掛けないうちに俺は帰るよ」 「迷惑なんて・・・そんなはずないでしょう」 彼は足下の風呂敷を背負い、頭巾を頭に巻いた。 小川を軽々と飛び越えると向こうの河川から振り向いて言った。 「やっぱり、俺あまちよさんと初めて会った気しねぇわ」 苦笑いでそう言った。 川が互いを隔てる。 「前も、こうやって川の此方と其方で分かれたよな・・・」 「・・・そうだったのかしら」 「あぁ」 一度深く頷いた。 「おくってやれれば良かったんだが・・・」 「怪我人はすぐに帰りなさいっ」 ぴしゃりと彼女は言い放つ。 「道中お気をつけて」 「あまちよさんも・・・では、またいつか」 彼は闇へ姿を消した。 「またいつか・・・“直吉さん”・・・」  ――“さよ”はいつの時代も貴方を想っております。  彼方と此方を隔てるその轟々と流れる大河。 嘗て若い男女を隔てたその川は今も誰かと誰かを離別させている。  荒々しく流れる川の向こうに貴方を見送ったのは私が生まれる前のこと。 荒々しく流れる川の向こうに君を見て、手招きしたい手を片手で押さえ込んだのは俺が生まれる前のこと。 次こそ共にその大河を渡る運命を・・・
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