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ふぅ、っと息を吐き出すと風船ガムみたいに、口から勢いよく何かが膨らむ。
今日は、灰色の大きな袋だ。
あたしはそれを両手で挟み込み、勢いよく叩いた。
ぱちん、
思っていたより小さな破裂音。いいえ、
あたしの手がちょうど重なった音。
後ろを歩いていた同級の長内<オサナイ>が、怪訝な顔であたしを見た。
「なんだよ長内、文句あんのかぁ~。」
ふらつく重心で一回転して、長内を睨んだがヤツは右眉をぴくっ、と引き攣らせただけだった。
学校まであと5歩のところで足を止める。同じ制服を着た、同じような年頃の子供たちがみるみるあたしを追い抜いていく。
ただ、追い抜き際にあたしを一瞥するのが余計。余計、余計!!
叫びたい衝動を飲み込んだ。
代わりにふっ、と息を吐いた。
小さい赤い風船が口元から膨らんだ。あたしはそれの口を縛って、ポッケから用意してあった蛸糸をくくりつけて、リュックに結んだ。
小さな赤い風船が、いろとりどりの風船の中で揺らめいた。
満足して、ふっ、と笑うと、膨らむ前のオレンジの風船がどこからか飛び出した。
振り向くとまだ長内が居たから、何となく、それを投げつけた。
「言いたいこと言えねえなら、それ膨らませよ。すうっとすんぜぇ。」
長内が、くっ、と笑って、
「イカレてんなぁ、お前。」って言った。
「風船ためて、あたしゃいつか空を飛ぶんだぁ。見てなデブ!」
駆け出した瞬間、少し宙に浮いた気がした。
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