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不意に、高い笛の音が会場内に響いた。会場は一気に静まり返り、それを合図にアレンたちがフィールドに現れる。どうせ分からないだろうと思いつつ他の観客に紛れてを振ってみる。するとパッと目が合ったかと思うと手を振り返してくれた。
「良かった、気づいた」
「すごいね。この人の中で」
僕の魔力の波動を辿ったのかもしれない。それでもやっぱりこんな人混みの中じゃどうしても混ざってブレるから、探知能力の正確さに驚いた。流石にアレンは優秀だ。
「ーお待たせいたしました。これより第三試合を始めますー」
「テンさん呑まれてるなぁ」
そう言って、リオンが苦く笑う。アレンのペアの人は風紀委員で、リオンは良く知っているらしかった。
「真面目で仕事も正確にこなす人なんだけどいかんせん、肝がね小さいんだよね」
確かに遠くからでも分かるくらい顔色が冴えないし、動きもぎこちない。緊張しているようだ。見兼ねてアレンが彼に近寄り、なにか声をかける。
「アレンの足、引っ張らないと良いけど」
「アレンならうまくフォローするって」
「そうなんだろうけどさ」
結局試合直前まで2人はなにか確認するように話し合っていて、彼の表情も少し和らいだようにも見えた。
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