1169人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「一回戦突破お疲れ様」
試合を終えたアレンを労う。結局、彼は危なげなく勝利をつかみ二回戦進出となった。不安要素であったテンさんも、予想より安定した後方支援が目を引いた。
「ありがとう。まぁ、最初からこんなとこで躓くつもりなんてないけど。ていうかジフ。試合はまだ大丈夫?」
「あ!もうすぐみたいだから、急がなきゃ」
『あともう少しで決着つくって』とリオンが去り際僕に伝えてくれたのに。僕らは心持ち早足で会場へと向かいながら会話をする。
「リオンはどっか行ったの?」
「あぁ、なんか用事があるだか何だかで」
「…ふーん。そういえば、あいつどこ出身だったけ」
「ハテト地方だった気がする」
「国境付近のとこか」
「そうそう。この頃貧困問題で話題になってるよね」
「どうも端の方になると整備が行き届かなくなる。良くないね」
「それを解決するために、いま議会で話し合ってる、んだ…」
そこまで口に出て、しまった、と思った。なぜ一般市民である僕が議会の内容を知っているのか、と問われればもう答えようがない。ヒヤリとしてアレンを見れば、笑みを浮かべて僕を見ていた。
それは『とっくに知ってたよ』と言うように。
-
最初のコメントを投稿しよう!