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「あ、アレン…ごめん、僕」
たくさんの生徒が行き交う中で僕らは立ち止った。周りの生徒たちが、ちらりと横目で僕らを見ていく。
「いいよ。俺もあえて聞かなかったし。そんな簡単に口に出せることじゃない」
「でも、やっぱりちゃんと言うべきだった」
「まぁ確かに、ジフの口からききたかったかな。…いやーでも、気付いた時は驚いたよ。まさか、嘘だろって。でもどっかで、やっぱりそうかって思う部分もあったな」
アレンと過ごしたのは一年と半分。短いようで、でも僕がもし記憶を残すとしたらこの一年半にしたい。たくさん思い出が詰まってるから。きっとこれからも何度も思い返すだろう。そう思うと、なんだか大丈夫な気さえする。アレンは遠い空の向こうに視線をやった。声を低めて、彼は言う。
「それでさ、俺、それからずっと考えてるんだ」
「…なに?」
アレンは視線を戻し、真っ直ぐ真剣な目で僕を見た。
「例の儀式、なんとか出来ないのかなって」
*
「すいません!遅れました」
「あぁ、大丈夫ですよ。まだディレカルトさん来ていませんから」
集合場所には運営委員の生徒が一人待っていた。
「会長とペアだなんて、幸運ですね。いや…その表情を見ると、災難、かな。珍しい」
「いえ、災難だなんてそんな…」
正直、不謹慎だが嬉しくも思っていた。一緒にいられる、彼の力になれる。それが、とても貴重なことで。でも、彼は僕を求めていないのだという現実が、思った以上に僕を打ちのめす。
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