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目を通し終えたのを確認すると、実行委員の彼はエメラルドグリーンの腕輪を僕たちに渡した。
「物理攻撃を吸収する腕輪です。付けている間は体に直接的なダメージは受けませんが、蓄積してある程度に達すると壊れるので、そうなったら戦闘不能となりますから注意して下さい。何か質問は?」
僕もキルも横に首を振る。「それでは試合開始10分前にまた来ますので、ごゆっくりくつろぎ下さい」と頭を下げて彼は部屋を出て行った。2人きりになった途端、空気が一気に重くなる。僕は逃げるように「ちょっとトイレに…」と誰に言うでもなく呟きながら、部屋を出た。
*
「…はぁ」
彼が出て行った部屋で、俺はソファに思い切り身を預けた。グシャリと髪を掻き毟る。何してるんだろう。
本当は、本当は。彼の横に立って戦えることが震えるほど嬉しいのに。あの時よりずっと強くなったんだ、まだ全然お前には叶わないけど、でもいつか絶対に越えて見せるんだって言いたいのに。でも、その「いつか」が俺にはきっと訪れないから。
だから俺は心を決めたのに。今更、彼の、悲しそうな顔を見るのが、ツラいなんて。ダメだ、と自分に言い聞かせる。彼の後の絶望を考えろ。ここで自分の想いを打ち明けたところで、そんなものはツラさから逃げるための、体のいい言い訳にしかならないのだ。
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