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ナイフは真由の右腕をかすめ、浩太の喉元にも届いていた。
赤黒い血液が破れた皮の隙間から噴き出し、口から溢れる血を滴(たらし)ながら、仰向けに倒れる浩太。
両の目は大きく見開いていた。
まだ右手に握るナイフが震え、カタカタと床を打ち鳴らしている。
ミク先生は、倒れた浩太に駆け寄ってナイフを奪い取ると、傷口にハンカチを当てて止血を試みる。
浩太の首から上半身、そしてミク先生の服が赤黒く染まってゆく。
私は、眼に映る出来事を現実として認識できなかった。
真由を支えながら、あまりに日常とかけ離れた光景を虚ろに見ていたんだ。
「いやああああああああああああっ」
現実を直視した真由が、さっきまでよりもずっと大きな悲鳴を上げた。
私達の“終わり”はもう始まっていた。
Chapter.1 End
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