Chapter1 終わりの始まり

38/38
5445人が本棚に入れています
本棚に追加
/394ページ
ナイフは真由の右腕をかすめ、浩太の喉元にも届いていた。 赤黒い血液が破れた皮の隙間から噴き出し、口から溢れる血を滴(たらし)ながら、仰向けに倒れる浩太。 両の目は大きく見開いていた。 まだ右手に握るナイフが震え、カタカタと床を打ち鳴らしている。 ミク先生は、倒れた浩太に駆け寄ってナイフを奪い取ると、傷口にハンカチを当てて止血を試みる。 浩太の首から上半身、そしてミク先生の服が赤黒く染まってゆく。 私は、眼に映る出来事を現実として認識できなかった。 真由を支えながら、あまりに日常とかけ離れた光景を虚ろに見ていたんだ。 「いやああああああああああああっ」 現実を直視した真由が、さっきまでよりもずっと大きな悲鳴を上げた。 私達の“終わり”はもう始まっていた。 Chapter.1 End
/394ページ

最初のコメントを投稿しよう!