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「こんな感じでいいじゃないですか」  フィーナはおもむろにリクラムの前に歩いていき、膝立ちすると、リクラムの首に両腕を回して体を密着させた。  リクラムが体をびくっとさせる。なぜだか硬直していた。 「フィ、フィーナ!? 何してるの!」  シュリンが突如焦ったような声を上げた。 「何って、こういう風にしてみては? という提案です」 「こういう風って……あなたね!」  一旦体を離して振り返ると、頬を真っ赤に染めたシュリンがあたふたとしていた。  やはりシュリンの考えていることは分からない。  そんなことよりも、先ほどリクラムに抱きついたとき、思ったより人肌というのは温かいのだなとフィーナは気付いた。  もう一度体を密着させて、先ほどの温かさを全身で感じる。リクラムの鼓動が伝わってきた。妙に速く脈打っている。  リクラムの体温を感じ、落ち着かない鼓動に耳を傾けていると、胸の内まで温かくなってくる。初めての感覚だった。例えようのない、温かな何かが胸に溢れてくる。 「フィーナ?」  耳元でリクラムが気遣わしげに名を呼んだ。  フィーナはリクラムの肩に顎を乗せると、しばらくの間、初めての温もりを抱きしめるように脱力した。
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