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「やはり貴方は馬鹿なのだと思います……」
少女の呟き――広々とした大地/見渡す限りの土色/時々緑。
傍ら=少年――困ったように微笑。
「馬鹿はひどいなぁ」
少年=ムウの若君――深色の赤眼/漆黒の髪/細身の肢体/夜色の民族衣装/牙を収めた獣の穏やかさ。
「馬鹿だから馬鹿だと言ったのです」
少女=少年の従者×刃――紅玉の瞳/佳麗に伸ばした銀の髪/白妙の民族衣装/鋭くも美しい業物の風情。剣呑な視線を少年へ。
「ファルシムの族長様に喧嘩を売るなんて、正気の沙汰とは思えません」
少女の小言――弟を窘める姉のように。
「…………」
空を見上げる少年――ぼうと虚空を見つめる=聞く耳持たず/無言の抵抗。
「主様? 刻みますよ?」
少女の笑み=花が咲いたように可憐/どこからか現れた黒刀を少年の喉元に突きつける。
少年――びくりと硬直。なおも黙秘を続行=必死の抵抗=一瞬。観念/吐息/横目に少女を見やる。
「……力試しに手合せ願っただけじゃないか。こんな機会はなかなかないんだぞ?」
「身の程をわきまえろと言っているのです」
少女――ため息/刀を納める=ふっと消える黒刀。
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