プロローグ

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  上気した顔で、レーガンはぶつぶつと不平を連ねる。けれどこれも、仕方の無いことではないか、彼が不運なだけなのだから。 競馬が一通り終わると、急に客席が違うざわめきに変貌する。喜びと悔しさが混じり合った、そんなざわめきだ。 そんな中、レーガンは唯一人呆然と立ち尽くしていた。 余りの敗戦続きに心も折れてしまいそうだった。両手に握られた拳から、頭皮の奥から、ジワリと汗が滲む。 友人に勧められた賭博、それがこの競馬だった。しかし、彼が友人にコツを聞こうとした時には既に、友人の自宅があった場所は空き地となり、それ以来連絡も取れなくなっていたのだ。 それどころか、友人の自宅があった場所の前の通りには、全身を黒いスーツで固めたオールバックの若い集団が集まることも多々あったのだ。 レーガンは、彼らが何者なのか未だに分かってはいないけれど、少なくとも悪い人ではないと実感していた。何せあの時、「ここの人の御親戚ですか」と聞かれ、その場は取り合えず「いいえ」と答えたところ、名刺を渡してくれたのだから。
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