第一章 不幸なオヤジの伝説

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  『新登場! これで早速HP回復、エリクサー!』 そう書かれた紙が貼られた隣の棚へ、レーガンは目を奪われた。 「HP……回復……」 賭けに負けた今の自分のHPを考えるレーガン。確かに心身ともにずたぼろな状態ではあるが、今はそれを忘れさせるビールが一番だ、と思い直す。 そして取っ手を引いた刹那、「いや、待てよ」と更に思い直す。 そうして、『エリクサー』のラベルへチラリと視線を送る。 嫁だ。そこには彼の唯一好きなゲーム、通称(パイパン)、『Pinal Panther G』のヒロインが載っていたのだ。 レーガンは悩んだ。ここでビールを買おうものなら嫁を裏切ることになる。 しかし、先程チラ見した店員は、自分好みの若い女性店員だった。《パイパン》の飲み物を買って引かれるのはやや気が引ける。何の宛ても無いが、ここで『できるおじさん』を見せつければもしかすると。 そんな事を頭の中でグルグルと回しながら、最後にレーガンは勢いよく扉を開けると、ビールを取り出した。
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