第一章 前兆-daydream-

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針が天を指したその刹那、世界が凍った 比喩的な表現などではない 自分の周りのあらゆる事象が停滞していたのだ 道行く人々の足は踏み出した空中に留まり、橋の下を流れる川の流れもまた、見紛うことなく止まっている 空気は重くざらつき、息苦しささえ感じる程に、彼の肺をじっとりと満たしている    ・・・・・・・・・ そう、時間が止まっているのだ。 「な…なんだよこれ…」 彼は世界から取り残されたような錯覚を覚えながら、辺りを見回す しかし、いくら見回せど動いているのは自分ばかり ―――とは言え彼も魔術師の端くれである 常に優雅たれとは言わない しかし、ただ慌てふためいているだけでは格好が付かない これはそういう物だと割り切ってしまえば、物を考える余裕というものが生まれてくるものだ
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