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出来上がったのは、パネル状の“結界”──むしろ、“結界”の破片と呼んだほうが正しいか。
その特長は、切れ味。
押し潰すことに特化していたボックス型や、防御特化の通常型とは違う。
──空飛ぶ刃だ。
「行け──」
声に反応するように、無数の“結界”の刃が暗闇の先へ飛んでいく。
エバンズがやってみせた作戦と同じだ。
敵の姿こそ見えないが、だいたいの見当をつけ、縦横無尽に刃を掻き回すことで、無作為に敵を捉える。
闇の先で飛び交う刃は、きっとエバンズの身体を捉えてくれるはずだ。
だが……
「おかしい」
いつになっても手応えは無かった。
その先にエバンズがいるのかさえ、疑わしくなってしまうほどに、“結界”が何かに接触したという反応は伝わってこない。
不気味ささえ感じた。
「陸斗、一旦上へ戻ろう。ここは、なんかヤバい気がする」
嫌な予感……言ってしまえばそんなところだろう。
しかし、この胸騒ぎは無視していいようなものじゃない。
「あのヤロウを取り逃すつもりかよ」
「いや、そうじゃない。奴はきっと逃げない。ただここは──」
俺の言葉を裂くように、辺りの闇が眩い光によって、取り払われる。
突然の光に、目を細める。
背筋を走る悪寒。
全身を駆け巡るのは、恐怖。
「おいおい……」
身体の全細胞が、その危機を悟り、信号を発しているかのようだった。
毛穴という毛穴から汗が吹き出し、思考回路は事態の掌握のために、ひたすら動く。
漠然とした、死線。
「ハメられた──」
さっきまでの暗闇が嘘のように、俺たちは圧倒的な光に照らされている。
俺たちは──数百にも及ぶ光の矢に、完全に包囲されていた。
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