終わりへの始動

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「きっしっしっ、だけど、甘いね。俺らをナメてやがる」 陸斗の全身から解き放たれるオーラ。激しく脈打つそれは、陸斗の力の解放を意味する。 「“白夜”発動──」 陸斗から伝わる覇気は、俺でさえ鳥肌が立つ。 人工的な色合いのその金髪は、美しいまでの白銀に変わり、その瞳は紅を帯びる。 陸斗の右手を覆う黒い塊。左手を覆う白い塊。 エバンズの表情は、途端に焦燥を宿した。 一斉に動き出す光の矢。 俺は乗り物代わりにしているボックス型の“結界”を一気に前進させた。 正直、あの数の矢を見せつけられたときは死ぬかと思ったが…… 「あんたがバカでよかったよ」 あのまますぐに矢を動かしていれば、俺たちは何の対応もできないまま、全身を無数の矢で貫かれていただろう。 だが、エバンズはそうはしなかった。 それ見せつけ、俺たちに時間を与え──さらには、あろうことか、俺たちの前に姿を現した。 それら全てが、お前の敗因だ。エバンズ。 俺たちの後背に形成される黒い穴──ブラックホール。 それは、光の矢を掃除機のように吸い込んだ。さらに俺が“結界”を張り巡らせ、おこぼれの矢も相殺する。 そして、エバンズの頭上に浮かび上がるのは、白い穴──ホワイトホール。 「そっくりそのまま返してやるよ」 白い穴からは黒い穴が吸い込んだ光の矢がそのまま吐き出された。 降り注ぐ矢。 その動揺を顔にさらけ出したエバンズに、陸斗が迫る──その手には、“神槍レーヴァテイン”が握られていた。 「行っけぇぇッ、陸斗!!」 そして、陸斗の槍がエバンズの胸を貫いた。
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