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地面を蹴り、大きく跳ね上がる。
そのまま、感覚が鈍いままの手を広げ、ギラーの顔面を鷲掴みにした。
「倒れろ、デカブツ!」
ギラーの身体が仰け反るように、地面に倒れた。
このまま頭を潰せれば──
「──ッ!!」
しかし、すぐに刀の柄が俺の首筋に迫ったため、後退せざるを得なかった。
そう簡単にはいかんか。
「グッグッグッ……」
ガスマスクを通して、くぐもった笑い声が発せられた。
それは笑い声というには、あまりにも不気味で、あまりにも醜い。
だが、同時に……驚きでもあった。
「貴様、意思があるのか……?」
今まで無言を貫き、如何なる言葉にも反応を示さなかったギラー。
本能のままに戦う、魔物のような存在かと思っていたが、どうやらそう単純でも無いらしい。
「グッ……グッグ」
今、この化け物は確かに笑っているのだ。
戦いを楽しんでいるのかもしれない。ただ単に気が触れただけかもしれない。
その笑いが何を意味するのかは、さっぱり分からないが──確かに奴は、ある意思の元に、笑っている。
俺は右手の感覚を確かめるように、グーとパーを手元で繰り返す。
ダメだ……これでは剣は握れまい。
「追い詰めた、とでも思っているのか?」
そう口にしてから、俺は思わず笑ってしまう。
「いや、この問いは無意味か」
笑いはしても所詮は化け物の類。
奴に言葉の概念は無い。
「まあいい──漢(おとこ)というのは、剣を通じて語り合うものだ」
ギラー、貴様という存在を、この戦いの中に見出してやる。
「覚悟しろ──今から貴様は、狩られる側だ」
俺は再び地面を蹴った。
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