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盾を前に翳したまま、一直線に突き進む。
精一杯に拳を握り締め、ギラー目掛けて、一気に突き出した。
腕に纏ったオーラが渦巻き、物々しいほどの濁音を撒き散らす。
パンプキン様から授かった“草薙之剣”と“八咫鏡”、そして、“天の羽衣”。
俺はそれに縋り、その力に頼ってきた。そうして、強くなった。
だが、今は違う──
「俺は!」
あの人の亡き今、俺は数十の命を──このどうしようもなく理不尽な世界にさ迷う人々の命運を、この背中に背負っているのだ。
この島に来たばかりの、脆弱な自分とは違う。俺は、強くなった。強くあらねばならない。
俺の操る三つの摩導具は、全てがパンプキン様から頂いた物──言うなれば、これはあの人の幻影。
そして、俺にとって、唯一絶対の……支柱。
いつまでも支えられてはいけないのだ。いつまでも、守られていてはならないのだ。
俺はもう、守る側の人間なのだから。
視線の先でギラーが刀を構えた。
付け入る隙の無い、洗礼された構えは、称賛に値する。
ギラー、貴様がどれほど強かろうと、俺は貴様の屍を越えてゆく。
誰よりも強くなるために──全てを守れるほどの力を手にするために。
そのために、俺は……
「もう誰にも縋らないッ! 今度はこの俺が、俺自身が、仲間の支柱となる……ッ!!」
俺は左手の“八咫鏡”を思いっきり投げた。それは、綺麗な回転をしながら、一直線にギラーへ飛んでいく。
脳内に描いたとおりの軌道だった。
あえて、心の支えとなる武器を手放すことで掴んだ、最大のチャンス。
パンプキンという絶対的な存在から解き放たれたその瞬間。
一瞬だけ生まれる死角──。
それはギラーの動きに僅かな戸惑いを、コンマ数秒の隙を作った。
「死ね、ギラー!!」
俺の渾身の右ストレートが、ギラーの胸部に叩き込まれた。
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