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俺の拳を阻むような反発が皮膚を伝うが、最大限のオーラを纏った拳にとって、それは無意味に等しい反発だった。
生物の体内独特の生々しい感触と温度が、右腕を包む。
「ガッ、あ、アアあギャ、ガガ」
拳はギラーの胸を突き破り、その背中から突き出す。
力を放出した拳のオーラは、唐突に集束した。
ギラーの口からは、悲鳴と呼ぶには少し語弊のあるような、不気味な呻き声が漏れ出した。
ギラーの右手からは刀が零れ落ちる。
「俺の勝ちだ、ギラー……ッ!!」
腕を引き抜くと、僅かばかりの血液がその風穴から飛び出した。
身体の構造が人間とは違うのか、出血量は少ない。
それでも、ギラーは確かに死の淵にいる。
「貴様は俺の踏み台に過ぎない」
俺の前で死ね。
俺という存在に平伏せ。
「さらばだ、ぎ──」
勝利の余韻に浸る最中、ギラーの拳が──俺の身体を弾き飛ばした。
壁に叩きつけられ、外壁が崩壊する。
何が起きたのか、しばらくの間分からなかった。俺の理解の範疇を、遥かに越えていた。
全身の痛みに耐えながらも、俺に、覆い被さる瓦礫を退かして立ち上がる。
胸に風穴が空いたまま、ギラーは立っていた。
「何故だ」
何故、生きている?
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