進撃

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一三四 仁 / テトラポットの山の中で見つかったのは、小さな子供の遺体──篠山苺の亡骸だった。 すっかり冷たくなってしまったその身体は、胸を真っ赤に染めていた。 まるで、素手で心臓を貫かれたような風穴だ。 「誰がこんなことを……」 ワニが歯ぎしりの音がここにまで聞こえた。 やるせない。 この女には私怨があるが、あの城での件もどうこう引きずるつもりは無かった。そもそも記憶を失っているのだから、ただの子供だ。 「見たところ、死体はこれだけだな」 「快楽殺人者か、変態か……」 「もしくは──運営か」 限り無く、運営である可能性が高い。 あの緊迫した状況の中、他の人間の目を盗んで、一人の少女を殺して、ここに捨てるというのにはずいぶん無理がある。 もし、そうだとしたら、絶望的なまでのサイコパスだが。 「クソ、誰が……」 ワニがまた呟いた。 浩太の面倒も見ていたというし、子供が好きなんだろう。もしかしたら、人間だったときは子持ちだったかもしれない。 それゆえに、誰よりも許せない。 「誰が殺ったか、なんてことは今は問題じゃないだろ?」 俺はいつまでも鳴り響く歯ぎしりに見かねて、口を開いた。 「そんなこと、どれだけ考えようが、答えは出ない。重要なのは、奴がどこへ行ったか、だ」 カイトが深く頷く。 「ワニ、ニオイは?」 ワニもようやく気を取り直し、例によって鼻を動かす。 しばらくの後、ワニが首を横に振った。 ワニの嗅覚でもダメか……。 「丁寧にニオイを消したか、瞬間移動でもしたか」 瞬間移動というワードに、アポロの顔が思い浮かぶ。 その可能性も否定できない。 「北へ行こう」 喉元でずっとつっかえたままだった言葉は、すんなりと大気を伝った。 「何にせよ、俺たちは知らないことが多すぎる」 俺はこの場にいる全員の顔を見渡す。 他の参加者の動向は依然として不明だが、結局は“南地区”の面子だけになってしまった。 「篠山を殺した犯人も、運営の招待も、誰が何のために、こんなことを目論んだのかも……きっと、この先に──最北の本拠地にあるはずだ」 謎の答えが、多くの真実が、そこにあることは間違いない。 「そう、だな」 カイトが歩み出た。 「他の参加者も、恐らくはそこを目指すはずだ──俺たちも、北へ行こう」 .
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