アイランド

4/21
前へ
/1539ページ
次へ
「どうなってんだよ」 ふと、自分のすぐ脇に、大きなリュックが置かれていることに気付く。 パンパンに膨らんだリュックは、学生のときの修学旅行を思い起こさせた。 俺は誘拐されたんだよな? まだ頭が今の状況に追いつかない。いや、追いつくはずがない。 考えれば考えるほど混乱する。 俺を誘拐する目的ってなんだ? なんでこんなところに俺を置いていく? とにかくリュックを見てみるか。 「…ん?」 リュックの陰に隠れている何か。 アタッシュケースだ。 よく映画なんかで、お金や麻薬なんかが入っているような銀色のアタッシュケースが目の前にある。 中はお金か? 薬か? それとも、何かのバイオ兵器とか? 一瞬、躊躇するも、俺は恐る恐るそのケースを手に取る。 爆弾とかってことは無いよな。 脇に汗が滲んでいるのに気づく。 けれど、その手は止まらない。 恐怖心を勝るのは、膨れ上がった好奇心。 ケースの止めどの部分を外す。 息を呑み、ゆっくりと蓋を開ける。 ──薬だ。 大きさには不釣り合いな、小さな注射器のようなものと、綺麗に折りたたまれた紙切れが1枚。 不吉な予感は、次第に現実味を帯びてくる。 もしかしたら、俺はとんでもない“何か”に巻き込まれてしまったのかもしれない。
/1539ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18148人が本棚に入れています
本棚に追加