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「どうなってんだよ」
ふと、自分のすぐ脇に、大きなリュックが置かれていることに気付く。
パンパンに膨らんだリュックは、学生のときの修学旅行を思い起こさせた。
俺は誘拐されたんだよな?
まだ頭が今の状況に追いつかない。いや、追いつくはずがない。
考えれば考えるほど混乱する。
俺を誘拐する目的ってなんだ?
なんでこんなところに俺を置いていく?
とにかくリュックを見てみるか。
「…ん?」
リュックの陰に隠れている何か。
アタッシュケースだ。
よく映画なんかで、お金や麻薬なんかが入っているような銀色のアタッシュケースが目の前にある。
中はお金か? 薬か?
それとも、何かのバイオ兵器とか?
一瞬、躊躇するも、俺は恐る恐るそのケースを手に取る。
爆弾とかってことは無いよな。
脇に汗が滲んでいるのに気づく。
けれど、その手は止まらない。
恐怖心を勝るのは、膨れ上がった好奇心。
ケースの止めどの部分を外す。
息を呑み、ゆっくりと蓋を開ける。
──薬だ。
大きさには不釣り合いな、小さな注射器のようなものと、綺麗に折りたたまれた紙切れが1枚。
不吉な予感は、次第に現実味を帯びてくる。
もしかしたら、俺はとんでもない“何か”に巻き込まれてしまったのかもしれない。
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