Dear world

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愛で世界が救えるというのなら、私を救ってみせて。 どう? 世界よりも全然ちっぽけで容易いでしょ? だから私を愛して。例えそれが偽りでもいいから、心から愛して。じゃなきゃ私、壊れちゃう。 それは半ば脅迫じみた告白だった。 放課後、校舎裏へ赴いた僕を待っていたのは、一人の少女とこの言葉だった。 途端に頭をよぎったのは嬉しいとか、断らないととか、人生初の告白でどうしていいか分からないとかではなく、 もう壊れてるよね? だった。 彼女、新宮(にいみや)ユリの奇行は周知の事実で、誰しもが彼女に不信感を抱き、近付こうとはしなかった。それはもちろん僕も例外ではない。ちなみに奇行と一口に言っても、その内容は様々だった。 ある日、黒板をチョークで白板にしてみたり、粗大ゴミとして放置されていたソファを八つ裂きにして八席にしてみたり、迷い猫をボールに見立てて一人野球に興じたりと、いたずらっ子から軽犯罪者まで変幻自在だ。 そんな奇人は僕に好意を抱いたらしいのだ。まったく、世の中、人の心とは不思議なものである。 しばし沈黙が続いた辺りで、口を開いたのは僕の方だった。その言葉は肯定。別に脅迫に屈したわけじゃない。 純粋に、彼女の言葉を信じて、彼女を救ってみたくなったから。この壊れ切った少女の修復過程を見たくなったからだ。
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