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この時の模範解答は知っていたから、僕はいつものように相槌を打った。
いやー、ホント可愛いねうちの彼女は。端整を追求して何度も研磨されたような顔。スラリと伸びる手足は日焼けを知らないのか絹のように白い。
そんな肌とは対照的に真っ黒な髪はいい匂いするしサラサラだし。あーもう、超愛してる。けど好きじゃない。むしろ嫌いな部類に入る。
でもそんなちっぽけなこと、二人の愛の弊害になんてなりやしないのさ! いくら嫌いであろうと心から愛していれば全て満ち足りるのだから。
「じゃ、帰ろうか」
「うん」
そう言ってユリはいつものように、人目を憚らず腕を絡ませてくる。愛する人とこうして愛を形に出来るって実に素晴らしい。あんなに動物を殺めた汚らしい手で触るなだからお前は嫌いなんだよ。あーあーあー、僕って幸せ者。幸せ者。幸せ者だよね?
木枯らしが吹く坂をゆっくりと、ユリに歩調を合わせて下る。ユリがもたれ掛かっているので、心なしか左腕が伸びている気がする。
「今日はどこか行く?」
僕が訊ねると、新宮は満足そうに頷いた。
「ちょっと、行きたい場所があるんだ」
「どこだよ、それって」
「ひみつー。とっておきの場所だよ」
「ふーん、じゃあ楽しみにして待っておくよ」
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