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手元の携帯電話でメールを打ったらしい彼女は口元を緩ませる。悪戯をする子供のような顔をして俺を見る。 「じゃあ、その曲がり角で待ってる。」 急がなくていいよ、と言い残してゆっくりと歩き出す彼女の後姿を熱い視線で追う。 「あれ誰?」 興味津々で近付いて来た友人に適当な相槌をすると、勝手に親戚の姉さんかと納得したように頷く。 親戚か知り合いかはどうでも良いが、やはり年上の女性は冷やかしの対象にもならないらしい。 その事実を他人から突きつけられて、分かってはいたけれどテンションが下がる。 そんな気持ちを奮い立たせるようにいつになく後片付けに力を入れて速攻終わらせると、ダッシュで部室に向かう。急いで替えのTシャツに着替えて汗くさいシャツは小さく畳んでスポーツバッグの奥に捻じ込む。
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