朝顔

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朝咲いて、お昼には萎んでしまう儚い花だけど、種になって次の年も咲く。 それが私とヒロミくんの絆みたいな気がして止められないの。 毎朝ホース片手に庭中に水を撒く。 お天気のいい日は水しぶきの中に虹が見えるんだよ。 「お母さん、来年からはちゃんとお母さんが水やりしてね。私いないんだから」 「はいはい、わかってるわよ」 来年からは私も社会人、この田舎の町を出て1人で働くことに決めた。 お兄ちゃんも3年前にそうやって出て行っちゃったし。 そうやってみんな大人になっていくのかな。 「ほら見て、虹」 キラキラする太陽が眩しくて、大きくホースを振ってはしゃいだ。 「本当ね」 「久しぶりに見たな」 水やりしないから見られないんだよ、ってお父さんに悪態をつこうと思ったら、違う声が聞こえた。 .
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