ポインセチア

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あれから3年、毎年欠かさず健吾の代わりに聡がクリスマスソングを口ずさみながらやってくる。 大きなポインセチアの鉢植えを抱えて。 今年はおもちゃの自動車を一緒に抱えてやってきた。 「健太、クリスマスプレゼントだぞ」 「いつもありがとう、さぁ上がって」 大きな箱に入った自動車はスイッチを押すとエンジンの音がして、ライトをつけて走り出す。 まだ意味はわかっていないだろう2歳のわが子は、その様子に大はしゃぎ。 あれから健吾からは1度エアメールが来たきりで、今どこにいるかもわからない。 写真集が出るらしいと噂では聞いたけど、買いに行く勇気は今のところない。 「夕飯外行こうぜ、なぁ健太」 何食べようか、なんていいながら健太を抱き上げる聡を見ていると、健吾のことを忘れなくちゃと思うのに、目の前にあるポインセチアがそれを許さない。 聡に忘れるなって言われているみたいな気がしてしまう。 .
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