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コートを羽織って近くのレストランまでの道を3人で歩いていると、同じように家族連れとすれ違う。
私達も家族に見えているのだろうかと思うと、胸が締め付けられる。
「あ!」
突然聡が車道を挟んだ反対側をみつめて立ち止まるから、なんだろうとその視線の先を追う。
そこには3年前に姿を消した健吾が立っていた。
「健吾……」
会いたかった人の姿を目にした途端、溢れ出した涙が止まらない。
慌てて聡が健吾に電話をかけると、ゆっくりとした動作で健吾がポケットから携帯を取り出した。
「もしもし、戻ってきてたなら連絡くらいしろよ」
『今日帰ってきたんだ。お前達の幸せそうな姿が見られてよかったよ。じゃあな』
「おい、待てよ」
聡の言葉を聞くことなく、健吾は電話を切り、3人に背を向けて歩き出した。
背中越しに手を振りながら……。
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