チューリップ(黄色)

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「いらっしゃいませ」 先頭で入ってきたのは初めての男で、年は30代後半というところ。 それに続いて20代の部下だろうか、若い男が興味深げに店内を見回しながら入ってきた。 BARなんて初めてなんだろう。 初々しくてちょっと頬が緩む。 その後に入ってきた人物に一瞬息を呑んだ。 「……来ちゃった」 それは紛れもなく俺の彼女の晴子で、1人で来ることはあっても会社の同僚を連れてくることなんて今までなかったから驚いた。 3人は迷わずカウンターに腰を下ろし、俺の前に陣取っている。 「ここが晴子先輩の行きつけですか」 「うん、まぁね」 「いい店だな」 「石橋さんに気に入ってもらえてよかったです。陸さん、今日は私の会社の先輩と後輩を連れてきちゃいました」 あくまで客とマスターの線を引いているから、俺もそれに合わせるしかない。 .
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