チューリップ(黄色)

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部下を酔わせてお持ち帰りしようとしたのが、ちょうどその恋人の目の前だなんて思ってもいなかったはず。 もしかしたら、晴子はそういうことも考えて連れてきたんだろう。 「おかわりご用意しましょうか」 動揺して空になったグラスを弄んでいるから、追い討ちをかけるように声をかければ、石橋はビクリと体を震わせて立ち上がった。 「あ、いや今日はそろそろ帰ろうかな。ははっ」 「じゃあ、私も。石橋さんタクシー拾いますね」 「ありがとうございました。晴子、うちに着いたらメールしろよ」 「はぁい」 晴子は上機嫌で、石橋はばつが悪そうに店を出て行った。 .
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