さくら

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更に準備のいいことにストーブやおでんの用意まであり、どれだけここで騒ぐ気なのかと呆れるものの、この寒さにおでんは正解だろうとも思う。 桜におでんに熱燗でもあれば言うことはない。 広いビニールシートにはまだ人は少なくて、残業組もいるらしくあまり揃っていないから、ストーブに飛びついたありさを残してしばらく散歩がてら桜並木を1人で歩くことにした。 今の時期だけライトアップされたことのほか立派な桜の木を見上げ、遠くから見たときはもっとピンクに見えていたのに、近づくと白く見える花びらに手を伸ばした。 その刹那まさに今日か明日が満開であろう桜が、強い風に踊るように舞い上がった。 「あっ」 久しぶりに遭遇する桜吹雪。 ザーッと音を立てて舞うちょうど中心に1人でいる贅沢。 .
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