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送別会当日、同期と共に花束を買いに少し早めに会社を出た。
会社近くの花屋さんで、優しそうなお兄さんに相談しながら花を選ぶ。
湿っぽい空気にはしたくないし、皆で笑ってさよなら出来るように明るい花束を作ってもらった。
「栄転なら門出を祝ってスイートピー入れますね」
ピンクをメインにした優しい色合いの花束を持って、送別会の会場になる居酒屋に向かう。
「門出かぁ…。そうだよね、栄転だもんね」
だけど、胸の奥では『別離』の方がしっくりきている気がして、なんだかせつない。
「梨子が1番お世話になったんだから、ちゃんとお礼して笑顔で渡すんだよ」
「…うん」
そう言われても、この花束を笑顔で渡せる気がしない。
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