カスミソウ

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「離婚しましょう」 夕飯を終えてリビングでテレビを見ているときだった。 お笑い芸人がコントをしている。 笑っていた口のまま、開いた口が塞がらない。 「え?」 コーヒーテーブルの上には記入済みの離婚届。 穏やかな笑顔の妻に寒気がした。 「浮気がバレていないとでも思ったの? 田代さん、可愛い人ね」 「か、彼女はた、た、た、ただの部下だよ」 嫌な汗を背中に感じながら姿勢を正してソファーに座りなおした。 「もう隠さなくていいのよ。明日あなたが会社に行っている間に引っ越しますから」 「ちょっと待ってくれ……」 何を言っても妻は穏やかな笑みを崩すことなく寝室に消えていった。 .
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