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その頃だったかな、遊びつかれたせいちゃんが、うちのリビングのソファーに座ったまま眠ってしまって。
買い物に出掛けたらしいおばさんの迎えを待っている間、せいちゃんの横にちょこんと座っていた。
お母さんが洗濯物を取り込んでくるって言うから、眠っているせいちゃんを見ながら待つ。
きっと目を覚ました時、誰もいなかったら心細いだろうから。
だけど、凄く気持ちよさそうに口を半開きで眠るせいちゃんに触れたくて、そっとほっぺを触ってみた。
全然気がつかなくて、今度は鼻を触ってみた。
それでも動かなくて、なんとなく柔らかそうな唇に触りたくなったから、そっと顔を近づけた。
ドキドキしながら近づいたら、長い睫毛がふわふわしてて、つやつやした唇がおいしそうで、思わず一瞬だけ口づけた。
誰も知らない、5歳の頃のいたずら。
それがキスだって、しかもファーストキスで、凄く大事なものだって少し大きくなってから知った。
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