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それから3ヵ月、すっかり専業主婦に馴染んだ頃、買い物帰りにマンション近くの公園に立ち寄る。
お天気のいい日は少しだけベンチに座って日向ぼっこをしながら、砂場で遊ぶまだ幼稚園にも通っていない小さな子供達を眺めるのが日課になっていた。
楽しそうにママたちが会話をしている姿に憧れる。
「楽しそう……」
ふと転がってきたボールを拾いあげ、走ってきた小さな男の子に手渡した。
「ありがと」
ニッコリ笑顔をもらって、香織も自然と笑顔になる。
裕一さんに似た男の子だったら可愛いんだろうな、女の子だったら私に似ておてんばかも。
未来の子供達を想像しながら幸せな気分になる。
ぐっしょり汗をかきながら、めいっぱい遊んでいる子供達の姿が眩しい。
自然とお腹に手を当て、赤ちゃんできたら良いのに……、と物思いにふける。
「あら、おめでた?」
いつも見かけるママさんが声をかけてくれた。
「まだなんですけど、出来たらいいなって思って……」
「意外と居るかもよ」
その言葉に頬を染める。
まさか……ね。
その日からまだ子供はいないけど、1人で公園デビューを果たす事になってしまった。
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