紫陽花

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梅雨時のじめじめした外の天気とは違って、空調の行き届いたオフィスの中。 朝から元気に給湯室から出てくる早苗。 月曜日の朝だというのに満面の笑みを湛えてコーヒーを運ぶ。 「戸田さん、おはようございます。コーヒーどうぞ」 いつもより少し濃いコーヒーには砂糖が3つ。 「あぁ、悪いな」 凛々しい顔立ちに似合わず甘党なその人は、ブラックコーヒーでも飲むように甘いコーヒーを飲む。 出社間もないにも関わらず、剃り忘れた髭が寝坊したことを物語っている。 仕事は出来るけど、ちょっとだらしない。 そして、せっかくの端正な顔立ちを帳消しにしてしまいそうな大きな欠伸をひとつ。 .
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