紫陽花

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仕事をしようにもまったく頭が働かない。 イライラしてついタバコが吸いたくなる。 「チッ、空か」 空になったタバコをゴミ箱に投げつけて、席を立った。 「ちょっと出てくる。今日は戻らないかも」 イライラと髪をかき混ぜてオフィスを出る。 その後姿を同僚がにんまりと笑って見送っているのにも気がつかなかった。 勝手に社用車に乗って、エンジンをかけ、社員名簿を頼りにひたすら走った。 早苗の実家に辿り着くと、適当に車を止め、ずかずかと門を開けて中に入る。 玄関を通るのももどかしく、勝手に庭にまわる。 ガラス戸の向こう側はリビングで、着物を着た早苗がソファーに座っていた。 それを確認すると、勢いよくガラス戸を開け、靴のまま上がりこんだ。 .
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