桔梗

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『ありさちゃんにプレゼント? 仲がいいのね』 冷やかしながらもいつもの呉服屋の連絡先を教えてくれた。 「意外と近いな」 思ったよりも近い場所にその店があったため、会社に帰るのを止めて運転手に行き先の変更を告げる。 ありさに浴衣をプレゼントしようと決めた途端、すぐに動かなくては気がすまない。 どうしてありさのことになると、こんなに堪え性がなくなるのか自分でも不思議だ。 老舗なのか、立派な佇まいの入口を潜り、中に入ればにこやかに女主人が歩み寄ってきた。 「藤堂様ですね、いらっしゃいませ。今お母様からお電話を頂いたところだったんですよ」 さすが母さん、すぐに俺が行くことを見越して連絡を入れておいてくれるとは。 .
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