桔梗

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「奥様のお名前を教えて頂けますか? お名前がわかれば寸法がわかりますから。折角のプレゼントですもの、渡すまで秘密になさるんでしょ?」 確か正月に着ていた着物もここのだったっけ?  さすが察しがいいというか、さすが老舗と言うべきか。 「えぇ、名前は藤堂ありさです」 すぐになにやらファイルを取り出して調べ始めた。 「はい、ございました。この寸法で作らせて頂きますので、お好きなものをお選びください」 そんなこと言われたって着物のことも浴衣のこともまったくわからない。 だから、ありさの雰囲気に合いそうな、ただただ俺好みの反物を選んだ。 付属のものなんてすべてお任せだ。 わかるはずが無い。 さっき電話で、ここの主人に任せて、出されたものの中から選べば間違いないと言われていたから、特に質問することも無く、すんなり決まった。 .
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