夕顔

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それは隣の部屋の庭からで。 「何か?」 廊下で挨拶くらいしかしたことが無い人。 いつもラフな服装で、ぼさぼさの頭のままコンビニ袋を提げた姿しか見たことがない。 時々物音がする程度でいたって静かに暮らしている人。 いつも家にいて、どこかに通勤している様子の無い不思議な人 そういう印象の隣人。 「ただいまって聞こえたから、お帰りって返しただけだけど?」 タバコを右手に持ったまま顔を覗かせたのは、珍しく肩までの黒髪を後ろで束ねた、色白だけど意外と逞しい男だった。 .
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