夕顔

7/10
前へ
/210ページ
次へ
だからこの人は私をからかって面白がっているんだ。 今度こそ部屋に入ろうと、水遣りを終えて窓に手をかけると、クスクス笑っていた隣人が、耳に響く深い声を放った。 「俺ならお帰りって言ってあげるよ。夏じゃなくても夜じゃなくても。大体家にいるし、意外と家事は嫌いじゃないし、でもちゃんと一応仕事もしてるし。お買い得だよ」 「あなたに私の何がわかるんですか?」 「わかるよ、ずっと君が彼氏に合わせて我慢していたのも。誰かに頼るんじゃ無くて、支えあっていたいことも。朝は忙しいから、夜に咲く夕顔が好きなことも。意外と俺に興味があることも……」 新しいタバコに火をつけて、隣人はニッコリと微笑んだ。 .
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2760人が本棚に入れています
本棚に追加