夕顔

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CDジャケットには、タキシード姿で長い髪をさらりと流して、清潔感を漂わせたイケメンが、ピアノを弾いている写真が使われているのに。 しかも隣から楽器の音がしたことなんて無いのに。 「あぁ、そりゃジャケット撮影の時くらい正装するさ。でも、これが本当の俺。ちなみに、君がよく聞いているあの曲は、『夕顔~Noble~』、去年君が夕顔に話しかけてるのを見て作った曲だよ」 その言葉に思わず半年間堪えていた涙が零れた。 「あの頃ちょっとスランプでね、なんとなく庭に出てぼうっと空を眺めていることが多かったんだ。そうしたら、毎日君が夜に咲く白い花に水をやりながら話しかけててさ、目が離せなくなってた」 「うそ……」 「そこから生まれた曲がまさか隣から聞こえてくるなんて、君が毎日聞いてくれているなんて、これは運命だと思った」 「私の夕顔になってくれるの?」 涙を拭いながら、恥ずかしげも無く語る男を見上げた。 「水遣りしなくても自分で出来るし、年中ちゃんとお帰りって言ってあげるよ。しかも、お望みなら毎晩生演奏とか出来るし、かなりお買い得だと思わない?」 「バカ……でも、ありがとう」 .
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