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ふらふらと彷徨っていた少年の視線が、俺で止まった。
覚悟が決まったのかな?にこりと笑えば、少年の喉がごくりと鳴った。
「魔神様」
「心は決まった?」
「…僕は、まだ死にたくありません」
「うん」
「だから、僕に力をください」
「あげるんじゃないよ。元から君が持ってるものを外に出すだけ」
右手を少年の胸…心臓の上に乗せる。びくり、と彼の身体が跳ねるが気にしない。別に殺しゃあしないのに。
だって、君を生かすのは俺の最初で最後の世界に与えられた使命だ。
俺は世界に魔神として喚ばれたから魔神として振まっているわけではない。
魔神が喚ばれる理由なんて、どうせ一つだ。魔族が危ないのだろう。
俺は、魔族を助けたいと思うから魔神になった。逢ったこともない生き物たちの為に、俺は同族を裏切った。
世間一般から見れば、俺は大馬鹿者なんだろう。
けれど、どんな物語でも大抵魔族は『悪』に分類される。それが、どうしても哀しかったのだ。
小さな頃は、ドラゴンに憧れた。少し大きくなると、幻獣に興味を持った。
俺の今までの人生は、決して出逢うことの出来ない魔物達と共にあった。それが今、触れられるところにいる。
憧れの存在を、俺が護れる。これ以上に嬉しいことがあるだろうか。
だから俺は魔神でありたい。俺が憧れ、愛したものを護ることが出来る魔神に。
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